聴覚と食欲の不思議な関係
まずちょっと想像してもらいたいことがあります。
もし自分がオーナーとなって飲食店を開くことになった場合、そこでどんなBGMを使用したいと思いますか?
自分でお店を開くということを考える時、品揃えやインテリアなどについては詳しくイメージをする人が多いのに、なぜかBGMはそれほどこだわりを持っていないということがよくあります。
食欲と音楽は全く関係ないかのように思えるところですが、実際は聴覚からの刺激が食事をするときの心理に大きく影響をします。
音楽を使ったダイエット方法なども提唱されているように、流れる音楽によっては食欲が増進されたり反対に減退したりといったことが起こります。
これは人の耳の内側にある鼓膜に通っている「鼓索神経」が舌の知覚神経の中を通っていることが関係しているようで、よい音楽を聞きながら食事をすることによりより美味しく食事をすることができると言います。
一般的な傾向として、ゆったりとした音楽は食欲を増進させ、賑やかでアップテンポな曲は食欲を阻害すると言われています。
ただし別の研究では激しい音楽を流した環境の方がより多くの食事をしたくなった人が多く見られたということも報告をされているので、一概に決めつけをすることはできません。
考えてみれば大衆居酒屋のような場所ではガンガンと歌謡曲を有線で流し続けているわけですから、そうした賑やかな雰囲気の場所では気分を高揚させるBGMを使用した方が食が進むと言えます。
危機感のある音楽はNG
ゆっくり・速いという音楽の分類方法ではなく、むしろ食欲に強い影響を与えるのは曲調です。
というのも人間は太古の記憶として「食事中の安全を確保したい」という本能が残っています。
食事中というのは外敵に対して非常に無防備な状態になっています。
そのため食事中には外敵が近づいて来ないかを確認するため聴覚が自然に過敏になります。
そこでホラー映画にあるような危機感が迫る音楽が流れるとなると、精神が興奮して食事を味わうどころではなくなってしまいます。
また音というのは人の記憶を呼び覚ます大きな要素となりますので、昔のよかった記憶に結びつくような音楽は気分をリラックスさせ食事を美味しくしてくれます。
クラシックの名曲の多くは自然風景を表現したものが多いことから、耳にしたときに豊かな自然や小川のせせらぎをイメージするためそれが食卓を豊かな気分に変えてくれます。
おすすめのクラシック曲としてはシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」より第4楽章や、ドビュッシーの牧神の午後への前奏曲などがあります。
クラシック以外の分野なら、ジャズやボサノバといったものは適度に気持ちを高揚させつつリラックスした気分に導いてくれるので大変おすすめです。